ある日、ABC社のオフィスにて…

電話:プルルル…プルルル…

見込み客見込み客

はい、ゼッタイ商事の川内(かわない)です。


セールスマンセールスマン

こんにちは、ナンデモ株式会社の売増(うります)です。覚えていらっしゃいますか?


見込み客見込み客

(…ナンデモ株式会社の売増…知ってたかな?…)いえ、、、存じ上げませんが。


セールスマンセールスマン

それは失礼いたしました。改めてご紹介させていただきますと…

これは、あるテレアポの1シーンです。
何の変哲もない電話営業でしょうか?

もしかしたら、少し違和感を感じるかもしれません。

しかし実際は「少しの違和感」どころではなく、電話を受けた側の見込み客の心の中では「緊急警報」が鳴り響いています。

なぜなら、人間心理の弱点を付いた、悪魔的に効果のあるコミュニケーション技術によって、見込み客の心のドアの鍵がこじ開けられてしまったからです…

なぜ、あの人は新規営業で売りまくれるのか?

あなたが電話営業や、訪問販売等を経験したことがあるなら、「今日は何回断られるだろう…」「怒りっぽい人に当たらないといいな」という不安や心配が心に影を落としたことが一度はあるのではないでしょうか。

一方で、営業がうまい人も同じ部署にいるはずです。
そういった人のスキルを学ぼうと、聞いてみたり、同行して観察したり、様々な手をつくすも、なかなかうまくいかない。

そんな新規開拓が苦手な方へ、人間心理の裏を突いたコミュニケーションのテクニックをご紹介します。

人間心理の研究を活用した話術「パターンインタラプト」

本記事では、NLP(※)から生まれたパターンインタラプトの概要と使い方をご紹介します。

※NLPをご存じない方への補足説明:

NLPとは、Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)の頭文字から名付けられています。

NLPは、1970年初頭、カリフォルニア大学の心理学部の生徒であり数学者だったリチャード・バンドラーと言語学の助教授だったジョン・グリンダーが心理学と言語学の観点から新しく体系化した人間心理とコミュニケーションに関する学問です。…また、クリントン元大統領やオバマ元大統領、トニー・ブレア首相などがNLPを学び演説で活用したことでも知られています。

出典:NLPとは?(天才たちのパターンを分析することから始まった) | 日本NLP協会

このテクニックは非常にシンプルなノウハウで、かつ簡単に使えるのが特徴です。

営業初心者でも少し練習するだけで効果的に使うことができるため、アメリカをはじめ、世界中でよく使われているセールス技法のひとつです。

相手の思考パターンを「先読み」し、会話の糸口をつかむ

NLP版パターンインタラプトの目的は、その名(Pattern interrupt = パターンを邪魔する)の通り、ある場面で通常起こるであろう「思考の流れ」「思考パターン」を崩すことにあります。

そうすることで、崩された側の人間は、想定外の事態に対応するため、一瞬考える時間が必要になるのです。

パターンインタラプトと比較するため、まずは伝統的な電話営業の例を見てみましょう:

電話:プルルル…プルルル…

見込み客見込み客

はい、ゼッタイ商事の川内です。


セールスマンセールスマン

はじめまして、ナンデモ株式会社の売増と申します。弊社では企業様の営業部門の労務管理を大きく効率化するシステムを提供しております。導入いただいた企業様では、従来から30%の費用削減を達成した例もございます。よろしければご紹介させて頂けませんでしょうか?


見込み客見込み客

忙しいので、結構です。(ガチャ)

電話:ツー、ツー…

このようなシーンは見覚えがあるのではないでしょうか。
相手からの返答はなく電話を切る音だけが聞こえる、なんてことも一度や二度ではないかもしれません。

これは多くの場合、相手は既に別の会社からセールスの電話を受けた経験が多くあり、「また営業電話だな!忙しいのに迷惑だな(イライラ)」という【思考のパターン】が出来上がっていることによって起こります。

こちらが必死に営業トークをしている間に、相手はこちらの話も聞かず、着々といつものパターンよろしく電話を切る準備を進めているのです。

出来上がっているのは思考のパターンだけではありません。
「営業電話は一秒で切るルール」を自らに課すなど、行動習慣にまで落とし込んでいる人も少なくないはずです。

この見込み客の思考パターンや習慣が、セールスマンにとって大きな関門のひとつとして立ちはだかっているのです。

トップセールスは思考のパターンを「切り崩して売る」

では、NLPを活用したパターンインタラプトでは、どのような流れになるか見てみましょう。

電話:プルルル…プルルル…

見込み客見込み客

はい、ゼッタイ商事の川内です。


セールスマンセールスマン

川内様、おはようございます。ナンデモ株式会社の売増でございます。(ストップ)


見込み客見込み客

(…ナンデモ株式会社の売増…覚えがないな…知り合いか…セールス…か?)、、、えー、どういったご用件でしょうか?


セールスマンセールスマン

失礼いたしました。改めてご紹介させて頂きますと…

 

違いに気付かれたでしょうか。

自分が何者かを一部名乗った後にあえてこちらからの発言を止めて、見込み客に時間を与えています。

この時、見込み客は、電話口の人間は誰なのか(セールスなのか)自信が持てないため、「いつもの(対電話セールス)パターンを中断して、考える」必要があります。

いつも通り「デンワキタ、シラナイヒト、デンワキル」という体に染み付いた得意の反射行動を、一旦やめることを余儀なくされるのです。

このテクニックは完全に新規の電話営業の他にも、「メールや留守番電話を残しているが、まだ直接ちゃんと時間を取って話せていないケース」などでも威力を発揮します。

その場合は、例えば下記のようなトークになります:

電話:プルルル…プルルル…

見込み客見込み客

はい、ゼッタイ商事の川内です。


セールスマンセールスマン

川内様、おはようございます。ナンデモ株式会社の売増でございます。覚えてらっしゃいますでしょうか?


見込み客見込み客

(…ナンデモ株式会社の売増…誰だっけ…?)、、すいません、ちょっと覚えがないのですが、どういったご用件でしょうか?


セールスマンセールスマン

先日メールをお送りさせて頂いた件なのですが…

こういったケースでは、相手のバリアを解くことに苦戦しているセールスマンの、強い味方になることでしょう。

セールスマンであるというだけで拒否されてしいまうことを回避し、その後の数秒を起点にして、適切な第一印象を相手に与えることができるようになります。

見込み客に隙ができた!次のアクションは?

相手の不意を突き、首尾よく話し続けるきっかけを得たあなた。
相手が体制を立て直す暇を与えず、下記のような誠実かつ明快なコミュニケーションで信頼関係(ラポール)を築きましょう。

  • 今、この時間に電話を受けてもらっていることへの感謝
  • 今この瞬間あなたは相手にこの電話をかけている理由の説明
  • この電話を切らず、あなたの話を聞くことが相手にとって有益となるであろう可能性

…といった項目をひとつひとつストレートに相手に伝え、信頼を得ることが最優先事項です。
くれぐれも、まだ売り込んではいけません。

あなたは既に最初にして最大の関門である、「話を聞いてもらえず電話を来られる(門前払いされる)」という難関をクリアしているのです。
自信を持って、確実にセールストークを進行していきましょう。

相手の反応を確かめながら、ステップバイステップで電話の相手が顧客となる可能性を探っていってください。

参考書籍

買う気にさせる営業心理学
―すぐできる!NLP理論によるセールステクニックの極意
林 紀光 (著)
PHP研究所